NEAT(日常の動き)/公開日:2026-10-08/更新日:2026-10-08/執筆:應匡(はり師・きゅう師)
結論:運動で燃やしたカロリーは、そのまま1日の消費に足し算されるとは限りません。2026年の研究では、人の有酸素運動の介入で、1日の総消費の増え方は、足し算で予想される増加の約30%にとどまっていました。運動を頑張る前に、日常の動き(NEAT)を見直す価値があります。
一日中歩く民族と、座る私たちの消費カロリー
タンザニアの狩猟採集民ハッザ族は、一日中、歩いて食べ物を集めます。その1日の総消費カロリーを、二重標識水法という方法で測った研究(Pontzer ら, PLOS ONE, 2012)では、体を動かす量はハッザ族のほうが多かったにもかかわらず、体の大きさを調整すると、1日の総消費エネルギーは、欧米人と差がありませんでした。
運動の消費カロリーは「足し算」にならない?
「400kcal走れば、その分だけ1日の消費が増える」と考えがちです。これを「足し算モデル」といいます。2026年2月に発表された論文(Pontzer & Trexler, Current Biology)は、この足し算モデルと、「活動が増えると他の消費が減り、総消費が狭い範囲に保たれる」という「制約モデル」を、運動介入の研究データと比べました。
結果、人の有酸素運動の介入では、1日の総消費の増え方は、足し算モデルで予想される変化の約30%にとどまっていました。また、筋力トレーニングでは、この補償(他の消費が減ること)が小さく、有酸素運動に食事制限を組み合わせると、補償が大きくなるように見えた、と報告されています。
※平均的な傾向の話で、個人差があります。
じゃあ、運動は意味がないのか
そうではありません。運動には、筋肉を守る、血糖や睡眠、気分を整えるなど、カロリー消費以外の価値があります。ただし、「消費カロリーを増やす」ことだけが目的なら、運動の効率は思ったほど高くない可能性がある、ということです。
運動より先に見直したい、日常の動き(NEAT)
NEAT(ニート)とは、運動以外の日常の身体活動のことです。
Levineらの研究(Science, 1999)では、16人の非肥満の方に、必要量より1日1,000kcal多く食べてもらう実験を8週間行いました。その結果、総消費の増加の3分の2が、NEATの増加によるもので、NEATの変化が、体脂肪の増え方の10倍もの個人差を説明していました。
また、Levineらの別の研究(Science, 2005)では、やせ型10人と軽度の肥満10人の姿勢と動きを10日間測定し、肥満の方は、平均で1日約2時間長く座っていたことが示されました。やせ型の方と同じ行動をとれば、1日あたり約350kcal多く消費しうる、と推定されています(小規模な研究です)。
Levineらの2006年の総説(Arterioscler Thromb Vasc Biol)では、同じ体重の人でも活動量は大きく違うため、NEATは人によって1日最大約2,000kcalも違いうると述べられています。また、肥満の方は、やせ型の方より、座っている時間が1日約2.5時間長い傾向があり、やせ型と同じ動き方をすれば、1日約350kcal多く消費しうる、とされています(総説での見解で、小規模な研究にもとづく推定を含みます)。
運動の時間が取れない方も、日常の動きなら、少しずつ増やせます。座ったままできる一歩、家事、階段、30分に一度立ち上がること。まずは、そこからです。
まとめ
- ハッザ族の1日の総消費エネルギーは、体の大きさを調整すると、欧米人と差がなかった(PLOS ONE, 2012)。
- 人の有酸素運動の介入では、総消費の増え方は、足し算で予想される増加の約30%だった(Current Biology, 2026)。
- 日常の動き(NEAT)の違いが、過食時の脂肪の増え方の個人差を説明した(Science, 1999)。
- 肥満の方は、平均で1日約2時間長く座っていた(Science, 2005)。
- NEATは、同じ体重の人でも、1日最大約2,000kcal違いうるとされる(総説, 2006)。
参考文献・出典
- Pontzer H, Raichlen DA, Wood BM ほか. Hunter-gatherer energetics and human obesity. PLoS ONE 2012;7(7):e40503. doi:10.1371/journal.pone.0040503
- Pontzer H, Trexler ET. The evidence for constrained total energy expenditure in humans and other animals. Curr Biol 2026(2月公開). doi:10.1016/j.cub.2026.01.025
- Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science 1999;283(5399):212-214. doi:10.1126/science.283.5399.212
- Levine JA, Lanningham-Foster LM, McCrady SK ほか. Interindividual variation in posture allocation: possible role in human obesity. Science 2005;307(5709):584-586. doi:10.1126/science.1106561
- Levine JA, Vander Weg MW, Hill JO ほか. Non-exercise activity thermogenesis: the crouching tiger hidden dragon of societal weight gain. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2006;26(4):729-736. doi:10.1161/01.ATV.0000205848.83210.73
掲載内容は、公開時点で確認できた研究の紹介です。更新により内容が変わる場合があります。参考論文一覧では、各論文の要点と研究の種類をまとめています。
この記事を書いた人

應匡(うすい おうきょう/臼井智治)
はり師・きゅう師(国家資格)。総合治療院 真氣 院長(長野県松本市)。臨床歴15年程、延べ8万人以上の患者様の治療にあたってきました。医師ではないので診断はしません。論文に書いてあることを、書いてあるとおりに伝えることを大切にしています。
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